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労働・社会参加

(1)シルバー人材センターでの就労に対する特別の配慮

〇綾瀬市シルバー人材センター(I工業所)事件・横浜地方裁判所判決平成15.5.13労働判例850号12頁 (一部認容、一部棄却)

「事業団は、規約4条1号に基づいて高齢者である会員に対して就業の機会を提供するに当たっては、社会通念上当該高齢者の健康(生命身体の安全)を害する危険性が高いと認められる作業を内容とする仕事の提供を避止し、もって当該高齢者の健康を保護すべき信義則上の保護義務(健康保護義務)を負っているものと解するのが相当である。そして、ある作業が社会通念上当該高齢者の健康を害する危険性が高いと認められる作業に当たるかどうかは、作業内容等の客観的事情と当該高齢者の年齢、職歴等の主観的事情とを対比検討することによって、通常は比較的容易に判断することができるものと考えられる」。

(2)業務の過重性と労災民訴

名神タクシーほか事件・神戸地方裁判所尼崎支部判決平成20.7.29労働判例976号74頁(一部認容、一部棄却)

「Xの従事していた業務は、その労働時間、拘束性、勤務体制のいずれの点をとってみても同種労働者にとって過重なものということができるところ、Xは本件脳梗塞発症当時71歳と高齢であって、Xと同年齢の同種労働者にとって上記業務の過重性は一層顕著なものということができる」。

「Xについては、Y会社の実施する定期健康診断において高血圧症を示唆する所見が連続して得られていた上、Xは、本件脳梗塞発症当時71歳と高齢であって、疲労の蓄積により脳・心臓疾患を発症する危険性の高い状況にあり、かつ、上記危険性を、Yにおいても十分に認識可能であったことが認められる」。

(3)高年法関係:継続雇用の手続きに問題がある場合

津田電気計器事件・最高裁判所第1小法廷判決平成24.11.29労働判例1064号13頁(棄却)

雇止めされた有期労働契約労働者の査定内容は、当該会社の継続雇用基準を満たすものであったから、「『高年』法の趣旨等に鑑み、……嘱託雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり、その期限や賃金、労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになるものと解される」。

日本郵便事件・東京高等裁判所判決平成27.11.5労働経済判例速報2266号17頁(棄却)

労働者が継続雇用制度の基準を満たしている「場合は、高年法の趣旨等に鑑み、YとXとの間において、Xの定年後もYの高齢再雇用制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているとみるのが相当であり、その期限や賃金等の労働条件については、Yの高齢再雇用制度の定めに従うことになるものと解される」。

(4)高年法関係:継続雇用期間中の雇止め

バキュームモールド工業事件・東京地方裁判所判決平成23.9.16労働経済判例速報2127号21頁(一部認容、一部棄却)

雇用確保措置の趣旨および当該企業における労働慣行から、「少なくとも65歳までの間は、健康を害するなどの特別の事情がない限り、嘱託雇用契約が更新されるものと期待したことには合理的な理由がある」として、解雇権濫用法理の類推適用により雇止めを無効と判断した。

エフプロダクト事件・京都地方裁判所判決平成22.11.26労働判例1022号35頁(一部認容、一部棄却)

「就業規則で、再雇用に関し、一定の基準を満たす者については『再雇用する』と明記され、期間は1年毎ではあるが同じ基準により反復更新するとされ、その後締結された本件協定でも、就業規則の内容が踏襲されている。そして、現にXは上記再雇用の基準を満たす者として再雇用されていたのであるから、64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる」として、解雇権濫用法理の類推適用を認めた。

(5)高年法関係:継続雇用の労働条件

協和出版販売事件・東京高等裁判所判決平成19.10.30労働判例963号54頁(棄却)

本件就業規則の変更が改正高年法の施行により、60歳を下回って定年を定めることができないものとされたことに対応するためのものであったところ、高年法では、賃金等の労働条件については、基本的に当事者の自治に委ねる趣旨であったと認められるが、「就業規則に定められた従前の定年から同法に従って延長された定年までの間の賃金等の労働条件が、具体的状況に照らして極めて苛酷なもので、労働者に同法の定める定年まで勤務する意思を削がせ、現実には多数の者が退職する等高年齢者の雇用の確保と促進という同法の目的に反するものであってはならない」。

トヨタ自動車(継続雇用)事件(仮名)・名古屋高等裁判所判決平成28.9.28労判1146号22頁(一部認容、一部棄却)

継続雇用を行う「事業者においては,労使協定で定めた基準を満たさないため61歳以降の継続雇用が認められない従業員についても,60歳から61歳までの1年間は,その全員に対して継続雇用の機会を適正に与えるべきであって,定年後の継続雇用としてどのような労働条件を提示するかについては一定の裁量があるとしても,提示した労働条件が,無年金・無収入の期間の発生を防ぐという趣旨に照らして到底容認できないような低額の給与水準であったり,社会通念に照らし当該労働者にとって到底受け入れ難いような職務内容を提示するなど実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められない場合においては,当該事業者の対応は改正高年法の趣旨に明らかに反するものであるといわざるを得ない」。

愛知ミタカ運輸(別名:X運輸)事件・大阪高判平成22.9.14労働判例1144号74頁(棄却、確定)

同社では「正社員においても、年功序列型賃金体系は採用されておらず……同一労働同一賃金の原則がより妥当していた」が、高年齢雇用継続給付金により賃金が下がることは制度上織り込み済みというべき」で「嘱託の地位はなるほど上記正社員より後退した内容ではあるが、なお高年齢者雇用安定法の予定する制度枠組みの範囲内であり、その範囲内では、同法の趣旨として期待される定年後の雇用の一定の安定性が確保される道が開かれたとの評価も可能なのであって、公序良俗に違反していると認めることは困難である。」

〇九州惣菜事件・福岡高等裁判所平成29.9.7労働判例1167号49頁(一部棄却、一部変更)

大幅な賃金の減額について、「再雇用について、極めて不合理であって、労働者である高年齢者の希望・期待に著しく反し、到底受入れ難いような労働条件を提示する行為は、継続雇用制度の導入の趣旨に違反した違法性を有する」。さらに「高年齢雇用継続基本給付金等と合わせれば生計維持が可能でさえあれば、定年前の賃金からの減額率がいかに大幅であっても許されるとはいえない」として、慰謝料請求を認めた。ただし、再雇用自体は成立していないので、地位確認請求については棄却。本件上告は最高裁で不受理となり(平成30.3.1)、高裁判決が確定した。

〇長澤運輸事件・最高裁第二小法廷判決平成30.6.1労働判例1179号34頁(一部破棄、一部棄却)

嘱託社員が再雇用された者であることは「労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において、労働契約法20条にいう『その他の事情』として考慮されることとなる事情に当たる」。継続雇用の場合には「両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である」。「精勤手当」だけは皆勤という事実に基づいて支給されるものであるから嘱託社員に支給しないことは不合理であるが、その余の正社員との格差(年収ベースで2割前後の賃金減額)については、「一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができる」などの理由により、不合理とは認められない

(6)整理解雇の基準として年齢を用いること

日本航空(病気休職・整理解雇)事件・大阪高等裁判所判決平成28.3.24労働判例1167号94頁(一部取消)

「年齢基準を設けた趣旨は、希望退職措置募集における対象者の年齢制限と同様であり、〔1〕Yは、経営破綻し更生手続開始決定を受けた更生会社であり、事業再生のためには競争力を高める必要があること、〔2〕Yにおいては、同業他社(ANA)に比べ、20歳代30歳代の客室乗務員の割合が低く、平均年齢が相当高いという状況にあったところ、上記年齢構成を引き下げることにより競争力を付けることができること、〔3〕将来的に管理職を含む指導者を輩出する層としての若年層を確保する必要があること、〔4〕控訴人においては、全体的には年功序列的な賃金体系であったことから、高年齢層ほど賃金水準が高くなる傾向にあったことに基づくものと認められ、これらは、競争力を付ける見地及び人件費削減効果を高める見地等から、合理的である。」「したがって、年齢基準は合理性を有するというべきである。」。

フジ製版事件・東京地方裁判所判決平成26.7.25TKC文献番号25504462(一部認容、一部棄却、一部却下)

45歳以上という年齢基準について、「高い経費削減効果があることが認められ、この事実に加え、年齢による基準には一般に恣意が混入する余地がないことに照らせば、45歳以上という年齢による基準の設定そのものに不合理性は認められない」としながらも、「再就職の容易さには自ずと差異があり得ることを考慮すべきであって……何らの補償措置も想定せずに45歳以上という高年齢層の従業員を被解雇者に選定したことは、合理性を欠く」との結論を導いた。

ヴァリグ日本支社事件・東京地方裁判所判決平成13.12.19労働判例817号5頁(一部認容、一部却下)

「被解雇者を選定するにあたり、一定の年齢以上の者とする基準は、一般的には、使用者の恣意が介在する余地がないという点で公平性が担保され、また、年功序列賃金体系を採る企業……においては、一定額の経費を削減するための解雇人員が相対的に少なくて済むという点においてそれなりに合理性があるといえないではない。しかし」、残存期間における賃金に対する被用者の期待、再就職が事実上非常に困難な年齢であることから、早期退職の代償となるべき経済的利益や再就職支援なしに上記年齢を解雇基準とすることは、解雇後の被用者及びその家族の生活に対する配慮を欠く結果になる。加えて、「幹部職員としての業務が、高齢になるほど業績の低下する業務であることを認めるに足りる証拠はないことからすると、幹部職員で53歳以上の者という基準は必ずしも合理的とはいえない面がある」。

(7)定年制度の合理性(いわゆる正社員の場合)

秋北バス事件・最高裁判所大法廷判決昭和43.12.25最高裁判所民事判例集22巻13号3459頁(棄却)

「およそ停年制は、一般に、老年労働者にあっては当該業種又は職種に要求される労働の適格性が逓減するにかかわらず、給与が却って逓増するところから、人事の刷新・経営の改善等、企業の組織および運営の適正化のために行なわれるものであつて、一般的にいって、不合理な制度ということはできず」。

アール・エフ・ラジオ日本事件・東京地方裁判所判決平成6.9.29労動判例658号13頁(棄却)

雇用契約における定年制度の合理性は……当該定年年齢、社会における労働力人口、企業経営をとりまく諸事情を総合考慮して判断すべきものと考えられる」。

(8)年齢を理由とする、有期労働契約の雇止め

日本郵便株式会社(65歳雇止め)事件・東京高等裁判所判決平成28.10.5労働判例1153号25頁(棄却)

民間企業において有期雇用労働者について年齢により更新限度を定めている例を見つけることはできなかったとの事実を認定した上で、65歳での雇止めを定める就業規則の規定について、「Yが本件上限規則を設けることによって、Xらが不利益を被ることになることは否めないが、旧公社時代の旧労働条件が変更されることにより被るその不利益の程度は、不利益となる内容上の観点からも、それに対する法的保護の必要性の程度という観点からも、限定的なものといわざるを得ないのであり、他方、本件上限規則を使用者であるYにおいて制定することの必要性が認められ、その内容それ自体も相当なものであるということができる。そして、このことに、上記説示に係る代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事案に関するわが国社会における一般的状況等を併せ考慮すると、本件上限規則の制定により、旧労働条件を変更する合理性が認められるものである」。

市進事件・東京高等裁判所判決平成27.12.3労働判例1134号5頁(棄却)

予備校が高齢化した講師は,魅力ある授業を行うことができず,退会者を出す原因となるなどと主張したが、「一般論として,教育者が高齢化することによって教育に困難が生じる可能性があることまでは認められるが,これらの報道や研究も個々の教育者の創意工夫による教育効果の向上を否定するものではない。……専任について年齢が50歳を超えた場合には一律に契約更新を行わないとの就業規則の変更を行う高度の必要性を肯定することはできない」。

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