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2018.10.23視察報告(海外)

ドイツ調査 (神奈川県立保健福祉大学 講師 川久保寛 2017)

1.はじめに

本稿は、2016年度に引き続き介護保険法を考察するために2017年に行ったドイツ調査を報告するものである。2016年度は介護保険法の保険者(介護金庫)であるAOK nordostを訪問し、主に介護支援拠点(Pflegestützpunkt)についてヒアリングを行った。その調査結果を踏まえて、2017年度は介護支援拠点を訪問し、実際にどのように活動を行っているのかヒアリングを行うこととなった。

なお、2016年度と同様に2017年度の調査も、高齢者法とは別の研究会である日独社会福祉制度研究会のドイツ調査の一環として行った。同研究会は科研基盤B(「ドイツ若者就労支援の研究 -成長過程に即した包活的支援と最低生活保障の視点から」、研究代表・木下秀雄龍谷大学教授)研究会のメンバーを中心にしており、研究会への参加をお許しいただいたこと、そして調査対象に介護支援拠点を加えていただいたことに心から感謝を申し上げたい。また、ヒアリングにあたっては三浦なうか氏に仲介・通訳のお手数をおかけした。どうもありがとうございました。

 

2.調査概要
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(1)日時・場所
2017年8月25日10時から12時過ぎまで、Pflegestützpunkt Berlin- Kreuzberg-Friedrichshain(介護支援拠点ベルリン・クロイツベルクフリードリッヒシャイン)で行った。

この介護支援拠点はベルリン特別州が設置することを決め、実際の運営はAOK nordostが行っている。なお、介護支援拠点は2008年介護保険法改正で創設された専門機関であり、設置するかどうかは州政府が介護金庫連合等の意向を踏まえたうえで決定するとされているものの、すべての州で設置されている。ヒアリングでは、AOKで介護支援拠点業務を担当するKathrin Wagner氏に同席いただき、 実際に相談に当たるHamann氏、Bindig氏から話を伺った。

 

(2)介護支援拠点の実際
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ベルリン特別州は36の介護支援拠点を設置しており、すべての介護支援拠点には3人の介護相談員(Pflegeberater)が置かれている。また、ベルリン特別州は12の区があるがそれぞれ区ごとに子ども担当を兼ねる者を置いている。この介護支援拠点は火曜と木曜にそれぞれ6時間、開けている。開いていない時間は家庭訪問を行ったり、介護サービスに関する研修を開催したり、逆に講習を受けたりしている。

相談には被保険者のほかに、家族や友人、実際に介護を行っている者が来る。それぞれ加入する保険の保険者(金庫)から、介護支援拠点の方が適切に対応してくれるから相談に行くように言われて来ることも多い。医師やリハビリ施設職員、鑑定書を書く人に紹介されて来ることもある。介護支援拠点を理解したうえで来所することはなく、いわば口コミによる来所である。

周知を図るために、介護相談員が大きな会社に行って情報提供をすることもある。介護と仕事の両立をどのように図るかなどの話をする。また、大学には家族オフィスという相談窓口があることが多いが、そこで大学教職員や学生に対して介護と勉学・仕事の両立方法について話をすることもある。

相談内容は介護に関するあらゆることであり、どういった給付があるのか、どういった内容なのか、給付の要件は何か、申請書の記入方法などである。また、保険者(金庫)の決定に対する意義申立てをするときのサポートも行っている。また、介護扶助とのつなぎもしている。保険者(金庫)の方が適切に回答できるような質問もあるが、たらい回しを避けるために介護支援拠点ですべて回答するようにしている。

また、介護支援拠点ではケースマネジメントを必要な者に対して行っている。自分で行うことが難しい状況にある方に対して、支援を行うことで人間関係のネットワークを再構築したりサービスの調達を行ったりする。すべての人に行っているわけではない。

実際に活動を行った例を紹介すると、2歳の障害を持つ子どもに対するケースマネジメントを行った。それまで小児科の医師や保育所との関わりがあったが、その家庭はトルコ出身であることから言語の問題があり、解決に至らなかった。結局、介護支援拠点は1年半をかけて①通訳を連れて訪問し、母親から問題を聞きとる、②子どもの診断を行う専門機関につなぎ、医学的診断を得る、③大学病院につなぎ、障害の原因を探る、④自治体の青少年局につなぎ、福祉給付を得る(異議申し立てを手伝う)、⑤介護保険にもとづき、本人が介護サービスを利用できるようにする、⑥障害児に理解ある保育園につなぎ、そこに通わせる、⑦障害児を支援する団体につなぎ、ボランティアで見守りをしてもらう、といった支援を行い、現在も関わりを続けている。私たちは総合的な相談をできる立場にあり、家庭訪問を行い、支援を行っている。

3.むすびにかえて
日本の地域包括支援センターと類似しているともいわれるが、介護支援拠点の活動の実際を把握することで相当異なるということがわかった。とりわけ、ケースマネジメントの対象者を限定しつつ、介入して問題解決を図るという点は特徴的である。もちろん、日本の地域包括支援センターも家庭訪問を行うし、周辺住民との関わりや支援では問題解決に至らない対象者への支援を期待される存在である。一方で、いわゆるごみ屋敷問題への対応など、行政との線引きは難しい問題である。

なお、本調査を活かした報告を比較法学会シンポジウムで行い、より詳細に分析を試みた論考が学会誌(比較法研究80号)に掲載される予定である。

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