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2017.02.14会員コラム

高齢者の囲い込みとホームロイヤーのすすめ(弁護士 田中恒司)

公的年金(特に厚生年金)の支給額は、社会の高齢化の進行にともない減少しています。

高齢者への介護等の負担は大きいので、親族が高齢者を押し付けあう事例があります。親族が高齢者の面倒をみないとすれば悲しい事態ですが、社会(全体)で高齢者を支える場面といえるかもしれません。

他方、受給額の比較的高い高齢者の財産や年金を頼りにして、親族が高齢者本人を「囲い込む」事例がみられます。ある時一方的に介護の必要な高齢者本人を連れていってしまい、他の親族には介護の状況や財産状況等を知らせることはないのです。

この「囲い込み」が真に高齢者本人の意思に沿うものなのかが明らかにならないと、親族間に余計な紛争が生じます。

囲い込んだ親族としては、介護という負担を負担しているのだから高齢者本人の年金を使わせてもらうのは当然だと考えているのかもしれません。他方、他の親族にとっては、高齢者本人の財産を食い物にしているのではないか、高齢者に対する虐待があるのではないか、などと考えてしまい、(それが実子であればなおさら)気が気ではないでしょう。

ここで囲い込みをした親族とそれ以外の親族との間に不信が生じ、親族の集まりといった場面では些細な事柄でも意見が食い違い、ひいては高齢者本人が死亡したときに、遺産について激しい争いが生まれるのです。

私もこのような紛争当事者の代理人を務めたことがありますが、いきなり高齢者を連れて行ってしまうといった、最初のボタンの掛け違えがなければ、親族間の争いがもっと穏やかになったのではないかと思うことがあります。

介護を必要とする高齢者への対処は、早めにすることが大事なことはいうまでもありませんが、その際には、法的な問題へのアドバイスを専門家から受けることが重要です。

ホームロイヤーとは、高齢者の法的ニーズに応えて、その日常生活を支援する業務に従事する弁護士をいいます。日弁連が提唱している制度です。

弁護士とホームロイヤー契約を締結することにより、トラブルを回避することができ、また老後の安心を得らえることになるのです。

多くの方は弁護士なんて、と敬遠されることもあろうかと思いますが、弁護士が身近にいることによって得られる安心感は、これまでの日本社会が経験したことのないものです。これを読んだみなさん、是非お試しを。

〖 弁護士 田中 恒司 〗

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